スクールMARIKOスタッフ・ブログ

2019年12月17日

浜田真理子さんに初めて会って生の唄を初めて聴いたのは島根県立美術館のイベントでした。2011年3月13日。東日本大震災から二日後の事。地震後の津波と原発の水素爆発の報道に接した直後で、松江もいつもと違う雰囲気でした。直後には自粛ムードが広がり、次に「がんばろう」とか「絆」とかの言葉が溢れました。自治会での義捐金や街頭での募金、支援イベントにも参加したけれど何だかずっとモヤモヤしていて、もう一歩踏み込んで何かしたいという思いがありました。2013年に始まった「スクールMARIKO」に参加し始めたのは、そんな僕の欲求を満たすためでした。

「みんなで知り学び考えよう」というスクまり。賛成か反対の立場を取らないとは言え、原発が立地する松江市内を会場とした取り組みです。当初は真理子さんを含めて5人のスタッフでの運営。スタートした初年度はピリピリしたムードが漂っていました。そんな空気の中、真理子さんやスタッフが神経を磨り減らしたりしてはいけない。原発事故の解決は先が見通せず、この取り組みも長く続けなければ意味がない。真理子さんと一緒に被災した人達の心に寄り添いたい。スタッフや参加者の皆さんと一緒に真理子さんや被災地を支えたいとの思いでお手伝いを申し出ました。

スクまりの1年は春から秋にかけて数回の講座を開催し、その期間は準備と本番と反省の繰り返しでした。冬の間にその年の総括と次年度の準備。多い年では毎月1回のミーティングを行いました。みんなと顔を合わせるミーティングは楽しく、とても充実していました。スタッフとして参加し始めた頃、楽しんでいる自分に罪悪感みたいなものを感じた事もありましたが、楽しかったからこそ7年間続けてこられました。

7年間で様々なゲストの方々のお話しを聞いてきました。2015年と2017年には福島県相馬市などを訪れる事も出来ました。環境や地域や家族など個人ごとに抱える事情や、置かれた状況によって問題は様々であり、被災地とか被災者とか避難者とか一括りには出来ない事、福島で見た現実は僕の現実であり僕の問題でもある事に気づかされました。自分自身も当事者として考えることこそ大事なんだ、と思うようになりました。

いつの頃からか風化が危ぶまれるようになりました。また、少しずつ復興の兆しも見えてきました。あの時ニュースで見た映像を脳裏に焼き付けて思い返す。そのことだけでは時として復興を妨げることにもなりかねません。スクまりに関わり続けていると新しい情報に触れることが出来ました。改善されて行くこともあれば見えにくくなっている問題や、また新たな問題もある。3.11を「忘れない」とは、その後どうなっているのかを「知り続ける」ことでした。

最終回には、東日本大震災発生当時、南相馬市役所の防災課で災害対応にあたった高野真至さんの生々しいお話しをうかがいました。2014年にもお越しいただいた森田文彦さんと佐藤定広さんもお招きしました。2014年当時は熱っぽく語る森田さんと落ち着いた口調の佐藤さんの対比が印象的だったのですが、お二人からは共に怒りや悲しみみたいなものが感じられたのを覚えています。でも5年経った今回は感じられず、最終回に少しホッとしました。
一方で、2015年にお招きし最終回にも参加して下さった内藤真紀さんの感想に目がとまりました。「もやもやは胸の底に沈殿しているだけだと気づく。撹拌されて濁った思いに支配されそうになった」と。
もやもやとは、2014年に森田さんや佐藤さんから感じた怒りや悲しみなどのネガティブな感情のことだと思います。スクまりに参加する以前に僕が抱いたモヤモヤも同じだったのでしょう。誰もが多かれ少なかれ傷つき、ネガティブな感情をエネルギーに変えてきました。僕はそのエネルギーをスクまりに注いだのかもしれません。傷ついた人たちの心のもやもやもが、ただ時間の経過だけで沈殿するのではなく、ポジティブな感情がこの先に進む力となるよう願います。そして僕たちは、もしあれが島根原発だったらと想像してきました。家族や職場や地域の繋がりを奪われた悲しみや怒りや憤りも想像し共有してきたつもりです。スクまりに関わってきた7年間で僕のモヤモヤは心の底に沈殿したけれど、時にはモヤモヤで心を濁してでも、遠い場所からでも、これからも声を上げることが必要だと思うのです。自分の事として考え、常に新しいことを知り続けようとしてきたスクまりの取り組みが無駄にならぬよう、未来を少しでも明るく照らせるように、これからも僕は僕の出来る事を考え、行動していけたらと思います。

みんなで一緒に知り、学び、考え、悩み、泣き、笑い、呑んで食べて歌ったスクまりでした。ご参加いただいた皆様、ゲストの皆さん、真理子さん、スタッフのみさなん、これまでどうもありがとうございました。

森田勉

2019年12月17日