こんにちは。
スクールMARIKO2016 第四回「廃炉から考える未来」ゲスト:吉井千周(都城工業高等専門学校准教授)の様子をお知らせします。
吉井先生はスクール始まって以来、初のことでしたが、マイクを使わず、生声で力強くお話ししてくださいました。
資料も、パワーポイントを手元のリモコンで操作しながらですので、パソコンに向き合いながらではなく、立ち上がり、こちらに向かい身振り手振りしながらの熱を帯びた説明でした。
「こちらの会場は銀行の金庫室を再利用して勉強会などのイベントに使われていますが、“原発は再利用できない”のです」と、話の導入は、スクールMARIKOの会場である“カラコロ金庫室”のことを引き合いに出しながら始まりました。
今回の講義のテーマはある一つの職業についてです。
飲食、車、道路、スマホ、学校、福祉、法律、娯楽、ゴミ処理など、僕らの生活は多種多様な職業の人の手によって作られたモノやサービスなどに囲まれています。数えきれない、中には想像したこともない職業もあると思います。
「廃炉」というのも、そのうちの一つで、僕はそれに関連する仕事に携わっている方にお会いしたことはありませんが、たくさんの職業の方が従事されておられます。
廃炉作業の現状ですが、デブリ(融け落ちた核燃料など)の回収に苦戦しているみたいです。ロボットを使った回収を模索・実験しているようですが、なかなか目途は立っていないというのがほんとのところのようです。今回のような事故はやはり想定していなかったのですね。汚染水の遮断も当初の計画が破たんしているようですし、最終処分場の問題もあります。何かを作ることと後処理は切っても切り離せないものですが、後者の技術がとても遅れていることが目立ちます。廃炉に係る人材育成も同じです。廃炉は何十年とかかります。現在従事している人たちは、年齢などの理由でいつかその職務を離れることになります。人材確保・育成は避けて通れない問題です。
原子力工学など、大学の学科で専門的に学ばれているそうですが、原子力を学ぶ学生は最盛期の1/8の数になっているようです。
今は、このような原発状況・社会状況ですので「未来へ向けた廃炉事業」というような形で廃炉を前向きな意味合いにし、国が育成プログラムをつくるなど対策をとったり、著名人が廃炉を推進するような発言も出てきています。
福島工業高等学校のホームページの専攻科紹介の一文です。
「このコースの教育研究は、復興人材育成特別プログラムの減災工学分野に関係しており、まちを災害から守る技術分野や災害復興に取り組む分野で活躍することのできる人材の育成を行う。」
この動きをうけて研究者や科学者が育ち、廃炉や災害対策への技術革新が進むことを期待します。
しかし、福島原発の廃炉人材育成事業に携わっている吉井先生は「まずい状況」と言われます。
今の育成事業は作業する人をターゲットにしていない。作業は技術的にとてもむずかしいものですし、社会的なプレッシャーも高い仕事です。危険も伴います。そしてどのような人材を育成するか議論もされていないとのことです。
そしてこれらのプログラムやその前提に「原発をつくることそのものへの問いかけがない」と言われます。
ここ何年かミュージシャンらの活動で学ぶこと、考えるきっかけをもらうこと、新たな視点に気づかされることがたくさんあります。大友良英さんのプロジェクトFUKUSHIMA!、寺尾紗穂さんの「南洋と私」「原発労働者」、七尾旅人さんの沖縄基地問題、マームとジプシーのcocoon。そしてもちろんこのスクールMARIKOの活動も。
吉井先生のタイの少数民族、島大の福井先生のヴァヌアツ研究のお話を聞かせてもらうことも自分たちの生活や歴史を見つめ直すことにつながっていると思います。
スクまりの日直の浜田真理子さんがこう言われました。
「スクまりをずっとやって、たくさんの人たちの話を聞く中で、どこまで立ち返って考え直さないといけないかと思った時、やっぱ哲学なんですよね。」
たくさんの問題があり、それに対応するために是非、白黒、右左、様々な論争がありますが、これを本当に解決し未来へ進むためには、最初のところに戻って根本の問いを投げかけてみる。これが遠いようで一番の近道かもしれません。
盛りだくさんの講義内容でしたが、未来へ向けてスタート地点が見えた今回のスクールでした。
おまけ 最後は恒例になった音楽の時間。
吉井先生はトロンボーンを演奏されるそうですが、今日はユーフォニウムを演奏されました。
最後に浜田さんが唄われたのは「浜辺の歌」でした。
長くなりましたが、ご来場いただいた皆様ありがとうございました。
ブログを見ていただいた方もありがとうございました。
スクールMARIKOスタッフ岡田